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トピックス 加齢と老化の違い ビタミンCと活性酸素種 食品に含まれるビタミンCの人体への吸収と排泄 カロリー制限しても寿命は延びない カロリー制限はやはり健康長寿に効果がある 三大栄養素と健康長寿

三大栄養素と健康長寿

Solon-Bietら(1) は、三大栄養素の摂取割合が最長寿命や健康寿命に及ぼす影響を調べるため、タンパク質、脂質、炭水化物の割合やカロリーの異なる25種類の餌をマウスに自由摂食させた。そして、高タンパク質食、または単なるカロリー制限では、健康寿命を達成できず、むしろ低タンパク食で血中BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類のアミノ酸)を下げるような食事が健康寿命に必要だと論文の中で述べている。また、必要なカロリーは、脂質からではなく炭水化物から摂るべきだとも述べている。しかし、タンパク質は生命活動に必須であり、高齢者にはサルコペニアやフレイル予防のためにも高タンパク質食が推奨されている。そのため、極端な低タンパク質食は、高齢者の健康を害する可能性がある。また、この論文の責任著者であるRaubenheimerは、Natureに寄稿した記事(2)の中で、次のように述べている。アメリカで供給された食事に含まれる平均タンパク質量は、1971年から2006年にかけて約0.8 % 減少しており、逆に脂質や炭水化物から得られるカロリーは8 % も増加した。増え続ける肥満の原因には、単に炭水化物や脂質の過摂取だけではなく、食事に含まれる栄養素、特にタンパク質のバランスが重要である。

日本では、農林水産省が発行した平成25年の食糧需給表によると、昭和40年から平成25年(1965年から2013年)の間、国民1人1日当たりの総摂取カロリーおよびタンパク質量は変わっていない。その一方で、炭水化物の摂取量が少なくなり、脂質の摂取量が多くなっている(図1)。日本では年々、欧米の値(特にアメリカでは脂質の摂取割合が35 % を超えている)に近づいており、これまで日本が長寿大国となってきた一因である日本食の栄養バランスが崩れつつある。厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書で、摂取する総エネルギー量に対するタンパク質、脂質および炭水化物の摂取エネルギー割合が、それぞれ13〜20 %、20〜30 %、50〜65 % になるように摂取するよう高齢者と乳幼児を除いて推奨している。今の日本の高齢者は、戦争により食べ物が少ない時代もあったが、日本食での整った栄養バランスで食事を摂ってきた世代である。このままの状態が続けば、日本は近いうちに平均寿命が世界一ではなくなるかもしれない。昔からいわれているが、健康で長生きするためには、栄養バランスの取れた食事が最も大切である。

 (文責:石神昭人)


参考文献

  • 1)Solon-Biet SM, McMahon AC, Ballard JW, Ruohonen K, Wu LE, Cogger VC, Warren A, Huang X, Pichaud N, Melvin RG, Gokarn R, Khalil M, Turner N, Cooney GJ, Sinclair DA, Raubenheimer D, Le Couteur DG, Simpson SJ (2014) The ratio of macronutrients, not caloric intake, dictates cardiometabolic health, aging, and longevity in ad libitum-fed mice. Cell Metab 19, 418-430
  • 2)Simpson SJ, Raubenheimer D (2014) Perspective: Tricks of the trade. Nature 508, S66

 

図1 三大栄養素の日本における摂取割合の推移(1965年−2013年)
  • 農林水産省が発行した平成25年度食糧需給表(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/zyukyu/index.html)より作成した。日本国民1人、1日当たりのタンパク質、脂質、炭水化物(糖質)の摂取量(kcal)をそれぞれ割合(%)で表している。タンパク質の摂取割合は変わらないが、年々、炭水化物の割合は減少し、脂質の割合は増加している。

 

 

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